以下の文書はアーカイブ済データです。
本ファイルの最終アクセスは [ERR: INT OVERFLOW] 日前です。
"Entrance"ワームホール
概要:
安定した時空間異常で、現段階では遠方宇宙への時空間開口部であるという仮説が立てられています。
宇宙開発機関による有人火星調査に赴いていた宇宙船との通信途絶、続く"博士"とのファーストコンタクトを経て発見されました。
形状はやや縦長のダイヤ型で、長軸は約20m、短軸は約10mです。厚みの無い二次元平面ポータルであり、物質とエネルギーは通過することができますが、光と音は伝達しません。
火星から██.███kmの空間に固定されており、公転を共にしています。
運用状況:
ワームホールを中心として観測衛星に偽装した構造物で覆い、センサーと監視カメラにより常時監視されます。
内側壁内にはManus lucis言語の発話方式に沿った発光・振動スピーカーユニット、出迎え用ドローン、防衛機構████が組み込まれています。
進入を検知次第、手順12-Doorscopeが自動遂行され、進入物の構造の解析と動向の観察を行います。24時間以内に進入物からの反応が見られない場合は手順13-Doormanに移行し、スピーカーによる対話の試み、必要に応じてドローンによる直接対面での応答を行います。
観察・対話試行いずれの段階に関わらず、侵入物の動向次第で緊急アクション14-Guardmanへ移行します。

ML恒星系
概要:
ワームホールの"向こう側"である宇宙空間(記録上ML恒星系と呼称)には1個の恒星および複数の惑星が確認できますが、これらの天体との正確な距離は不明です。
開口部の近傍には気球に似た形状の宇宙船が漂流しており、小天体の衝突による破壊の痕跡が見られます。内部にはManus lucisが呼吸するための液体が満たされていたと思われますが、一部が失われています。完全な探索には至っていませんが、宿舎、循環施設、発電施設、通信室と思しき空間が確認されています。"博士"の証言によると複数名乗組員がいたとのことでしたが、遺体は既に"博士"によって葬送されています。
船の外殻の素材は特殊セラミックや合金などの金属、内部は弾力のある半有機的な素材が多く用いられています。これらの素材の組成は完全には解明されていません。
現在、宇宙船は慣性の影響により少しずつワームホールから離れつつあります。
補遺:セカンドコンタクト計画
将来予見されるML恒星系側からのManus lucis進入を想定したセカンドコンタクト計画が立てられました。
"博士"の明確な寿命は判明していませんが、彼の存命中に限り、出迎え・交渉等の対話は"博士"自身が担当することが協議により決定しました。
長期的なアプローチとして、出迎えのためのメッセージを構造物の内側壁面に刻印しタイムカプセルとして後世に残す計画が立てられました。
更新:
壁面への刻印はに完了しました。
以下はメッセージのManus lucis言語からの大まかな翻訳となります。
こんにちは
私は██████恒星系第5惑星██████周辺において、公転年█████年に沈没した████████船の知識拾集・備蓄担当船員です。
あなた達が今居る場所は、SOLと呼ばれる恒星系第4惑星の近傍です。
私はSOL恒星系第3惑星の知的生命体に保護されていました。今は恐れず、このメッセージを読み進めてください。
そして、このドームは彼らによって建てられた防護壁です。捕獲や攻撃の意図はありません。
間もなく彼らは我々の言語で出迎えの言葉を投げかけてくるでしょう。出迎えのボートが派遣されるでしょう。
今は恐れず、それに応答してください。
もし、長期間何の動きも見えず、何の音も聞こえないとしたら、彼らは既にこの星系に存在していないか、科学技術を喪失している可能性があります。
その場合、今後の行動はあなた達の判断に委ねます。可能なら、この障壁を越えて、SOLを探索し、彼らの痕跡を探してください。
この空虚な海には、私たち以外にも光る声が存在していました。我々は孤独ではありませんでした。私自身も孤独ではありませんでした。
幸運にもあなた達が、彼らと相まみえることができたとしたら、互いに柔らかな握手となることを願います。

