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各種職員および物資輸送記録 (火星-バンカー間)

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▶ [火星基地より転送] Manus lucis_01関連文書更新 (編集履歴参照:衰弱)

転写:"Doorbell"隔離バンカー管理官の声明

付録-1 Manus lucis言語参考文書:ML言語解析プロジェクトチーム著"The Universal Language:Tanslating MANUSLUCIS"

以下の文書はアーカイブ済データです。
本ファイルの最終アクセスは [ERR: INT OVERFLOW] 日前です。

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以下の情報の殆どは“博士”による証言を基にしていることに留意してください。
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Containment

火星面基地アルファに隣接するサイト-MLに収容されます。施設内の各フロアは通路となるチューブ網で繋がっています。
水槽内の環境は、回収されたML 2035由来の小型宇宙船から採取された実物サンプルの水質データを参考に維持されます。
監視下に置かれること・業務の邪魔をしないことを条件に、呼吸用水を満たした船内服を用いてサイト内を移動することを許可されています。
食事の必須栄養素や水温の適正範囲など保護活動に必要な基本情報は、同様に小型船から回収された資料や実物を基に作成した保護マニュアルに纏められています。

Biology

概要:
全長約2メートルの地球外知的生命体です。胴体は正12面体の形状をしており、口と感覚器官を除く10面から10本の触腕が生えています。腕の末端には生物発光特性を有し、感覚器官・コミュニケーションに用いられます。

海洋惑星で進化してきた水棲生物であり、胴体の各面の境目(辺)の細い隙間から水を呼吸します。体温調節能力は変温動物に近いものの、呼吸時の向流熱交換や神経細胞の活動により幅広い水温化での適応が可能となっています。

胴体の表面は金属のような光沢がありますが、柔らかく弾力があります。体の大部分はタンパク質を安定させる特殊な物質でできており、骨はゼラチン質の軟骨、また体内に一切空気が含まれていないため、深海の水圧化でも生存が可能となっています。


単口(口から食べ、排泄する)。 祖先は泳ぎながら海水の微生物などを摂取していましたが、文明社会を構築していく中でこの食事方法は廃れ、一日をかけて溶けきるよう調節された必須栄養素のタブレットを口内に入れたまま活動することが一般的になりました。

彼らにとっての食事は、「朝ネクタイをつけて夜にはずす」のと同じだ。そのためか皆で集まって食事をするという我々の習慣は奇妙に見えるらしい。また、トイレで排泄するという概念はないが人前で堂々とするのは流石にマナー違反とされているようだ。何故だか、少し安心した。

― 主任研究員 ███博士

図1:口(左)と感覚器官(右)

口のある面の対面にはソナーに類似した感覚器官があり、特殊な音波で周囲の大まかな状況を把握します。腕の先には第二の感覚器官があり、物体に近づけることで更に細かい凹凸や色の濃淡を判別します。

例(図2):机の上にある物体を知りたい場合、ソナーで室内をスキャンし、机の高さや距離、卓上の物体のサイズや形状を把握して、「リンゴがある」事を認識する。続いて、腕を近づけて色や模様を見て初めてそれが「青リンゴだった」ということを知ることができる。

図2:イメージ

Ability

Manus lucisの最も特殊な生態として、複数の個体が集まると起きる「情動の平均化」現象があります。この現象については検証が不可能なため、推測が多く含まれます。

概要:
例として、指数「10」の怒りを抱いているの者の周囲に「1」の者が4人集まると、全員の怒り指数が「2.8」に希釈されます。
これによって激しい感情による突発的な事件や混乱を防ぐことができると考えられますが、それまで全く怒りを抱いていなかった者も若干の怒りの感情が湧いてくることになるため、一長一短と言えます。また、希釈されるのは怒り・恐怖・不安などの基本情動であり、嫉妬や罪悪感といった高次の社会的感情は含まれません。

”博士”が「人類の精神は細かく分裂している」ように感じる理由は、どうやらこれのようだ。彼らにとって感情とは、水溶性の分泌液のようなものなのだろうか?

― 主任研究員 ███博士

Culture

ハチ類と同様に半倍数性の遺伝様式であり、未受精卵は男性、受精卵は女性に成長します。女性は定期的に未受精卵を産みますが、繁殖に関する社会的規範によって受精卵の生成が管理・抑制されています。その結果、Manus lucisの人口は9割が男性となっています。繁殖法はイカ類にも見られる「交接」に近く、数年に一度の儀式として行われます。
女性は人口を維持する役目を担う存在として手厚く保護されており、管理の徹底された"宮殿"で暮らします。
一方、男性たちは地域ごとに設けられたコロニーで共同生活を行います。男児は医療と教育の専門施設で養育され、人間換算で3~5歳を迎えた頃に各地のコロニーが養子として迎え入れます。
繁殖の相手(配偶者)となる男性は社会の中から優秀な個体が選別されます。遺伝的多様性を保つため、繁殖が行われる度に別の配偶者が選別されます。

彼らに人間でいうところの恋愛感情があるのかどうかは不明だ、というのも、”博士”に説明しても「仲間意識の強弱」以上の理解ができていない様子だったからだ。
ちなみに、彼は今まで一度も女性の配偶者として選ばれた経験はないとのことだ。この件で彼をからかうのは禁止。

― 主任研究員 ███博士


越境が困難な海底山脈、海溝、潮流で隔たれた海域に独自の文化や習慣を持った共同体が築かれています(地球でいう「国」に相当)。
生息地ごとに異なる人種も存在し、それらはしばしば体色、模様、体の大きさ、胴体の12面体の形状(菱形12面体、切頂12面体など)で区別されます。
Manus lucisの多くに共通している価値観として「旅と帰還」があり、未訪の地へ旅に出て元居た場所に帰ってくることを通過儀礼としている共同体が多く存在します。そのため、種全体として"よそ者"への警戒心は緩い傾向があります。
また、この価値観が彼らの宇宙進出への意識を高め、人類よりもはるかに速く達成したとされています。

共同体同士の戦争の歴史も存在しますが、前述の特殊な生態の影響で群れでの戦闘行為に向かないことから、戦争は発生すること自体がレアケースとされています。


周波数スペクトルに似た形の表記文字を持ち、曲線上に文章が書かれます。(図3)ソナーによる凹凸の判別が情報入力の大部分を担うため、公共サイン、標識、看板などは厚みのある素材に彫る、またはエンボス加工を施すことで表記されます。
また、コンピューター等の電子機器にも凹凸によって文字や映像を映し出す技術が用いられているとされていますが、仕組み等詳細は不明です。
塗料を用いた筆記や液晶画面のように平面に表示する技術も存在しますが一般的ではありません。
発声器官は胴体の各面の皮下に張り巡らされており、振動させて音を発生させます。高音、低音、複数の音を組み合わせた和音、クリック音などで構成された言語でコミュニケーションを行います。

翻訳作業は徐々にだが進んでいる。彼らの言葉は非常に複雑で、まるでオーケストラだ。固有名詞や細かなニュアンス等は未だ未解明の部分が多いが、文法を構成するそれぞれの要素は人間言語にも見つけられる種類であるため、自力での学習もおそらく可能だ。ただし、口頭での会話はシンセサイザーを頼るしかないだろう。

― 言語学担当 ███████博士

図3:Manus lucis言語の一部














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以下の文書はアーカイブ済データです。
本ファイルの最終アクセスは [ERR: INT OVERFLOW] 日前です。

"Entrance"ワームホール

概要:
安定した時空間異常で、現段階では遠方宇宙への時空間開口部であるという仮説が立てられています。
宇宙開発機関による有人火星調査に赴いていた宇宙船との通信途絶、続く"博士"とのファーストコンタクトを経て発見されました。
形状はやや縦長のダイヤ型で、長軸は約20m、短軸は約10mです。厚みの無い二次元平面ポータルであり、物質とエネルギーは通過することができますが、光と音は伝達しません。
火星から██.███kmの空間に固定されており、公転を共にしています。

"Doorbell"隔離バンカー
運用状況:
ワームホールを中心として観測衛星に偽装した構造物で覆い、センサーと監視カメラにより常時監視されます。
内側壁内にはManus lucis言語の発話方式に沿った発光・振動スピーカーユニット、出迎え用ドローン、防衛機構████が組み込まれています。
進入を検知次第、手順12-Doorscopeが自動遂行され、進入物の構造の解析と動向の観察を行います。24時間以内に進入物からの反応が見られない場合は手順13-Doormanに移行し、スピーカーによる対話の試み、必要に応じてドローンによる直接対面での応答を行います。
観察・対話試行いずれの段階に関わらず、侵入物の動向次第で緊急アクション14-Guardmanへ移行します。


ML 2035恒星系
概要:
ワームホールの"向こう側"である宇宙空間(記録上ML 2035恒星系と呼称)には1個の恒星および複数の惑星が確認できますが、これらの天体との正確な距離は不明です。
開口部の近傍には気球に似た形状の宇宙船が漂流しており、小天体の衝突による破壊の痕跡が見られます。内部にはManus lucisが呼吸するための液体が満たされていたと思われますが、一部が失われています。完全な探索には至っていませんが、宿舎、循環施設、発電施設、通信室と思しき空間が確認されています。"博士"の証言によると複数名乗組員がいたとのことでしたが、遺体は既に"博士"によって葬送されています。
船の外殻の素材は特殊セラミックや合金などの金属、内部は弾力のある半有機的な素材が多く用いられています。これらの素材の組成は完全には解明されていません。
現在、宇宙船は慣性の影響により少しずつワームホールから離れつつあります。

補遺:セカンドコンタクト計画

将来予見されるML 2035側からのManus lucis進入を想定したセカンドコンタクト計画が立てられました。
"博士"の明確な寿命は判明していませんが、彼の存命中に限り、出迎え・交渉等の対話は"博士"自身が担当することが協議により決定しました。
長期的なアプローチとして、出迎えのためのメッセージを構造物の内側壁面に刻印しタイムカプセルとして後世に残す計画が立てられました。

更新:
壁面への刻印はに完了しました。
以下は刻印されたManus lucis言語の大まかな翻訳となります。

こんにちは

私は██████恒星系第5惑星██████周辺において、公転年█████年に沈没した████████船の知識拾集・備蓄担当船員です。

あなた達が今居る場所は、SOLと呼ばれる恒星系第4惑星の近傍です。

私はSOL恒星系第3惑星の知的生命体に保護されていました。今は恐れず、このメッセージを読み進めてください。

そして、このドームは彼らによって建てられた防護壁です。捕獲や攻撃の意図はありません。

間もなく彼らは我々の言語で出迎えの言葉を投げかけてくるでしょう。出迎えのボートが派遣されるでしょう。

今は恐れず、それに応答してください。

もし、長期間何の動きも見えず、何の音も聞こえないとしたら、彼らは既にこの星系に存在していないか、科学技術を喪失している可能性があります。

その場合、今後の行動はあなた達の判断に委ねます。可能なら、この障壁を越えて、SOLを探索し、彼らの痕跡を探してください。

この空虚な海には、私たち以外にも光る声が存在していました。我々は孤独ではありませんでした。私自身も孤独ではありませんでした。

幸運にもあなた達が、彼らと相まみえることができたとしたら、互いに柔らかな握手となることを願います。